当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
1中期経営計画の取り組み
<実施期間>
2022年3月期から2024年3月期までの3ヶ年
<不変の企業理念>
「みんななかよく」
<ビジョン>
「One World, Connecting Smiles.」
一人でも多くの人を笑顔にし、世界中に幸せの輪を広げていく。
<経営目標>
63期については、継続的に取り組んできた「経営の高度化」や既存事業中心に「利益の出る事業構造への転換」が奏功し、新型コロナウイルス感染拡大の経済停滞からの反動、いわゆる“コロナ戻り需要”をしっかりと捉えることができ、想定以上の営業利益で着地することができました。また、再成長に資する「大胆なかつ矢継ぎ早の投資」も同時並行で進め、新規事業中心に“次なる飛躍”の確かな手応えや市場からの期待も得ています。しかしながら、業容拡大に伴う人的リソースやケイパビリティの早期拡充、コンプライアンス意識のさらなる高度化余地、など人的資本経営を進める上での課題も顕在化しています。目先の財務目標だけに拘泥せず、末端まで浸透しきる組織風土改革の完遂、及び成長を見据えた積極投資を引き続き進めてまいります。
<戦略の三本柱>
ⅰ.組織風土改革
経営チームのガバナンスの課題、個別最適や組織のサイロ化、等の課題に対し積極的に対策を講じ、実行力ある組織への変革を進めてまいります。特に中計最終年度は育成・評価等の人事制度関連や、コンプライアンス、労働環境、仕事の充実度等の従業員エンゲージメントに係る新たな施策を導入し、組織風土改革を完遂してまいります。
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テーマ | 中計で掲げた施策/目標 | 進捗(63期) |
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“形・行動”の改革 | 経営の若返り
-
取締役級65歳→40~50代、
-
執行役員級54歳→30~40代、 |
●
“第二の創業”に資するマネジメント体制構築
●
各部のKGI指標と目標値については、透明性/合理的なプロセスで経営合意。指名報酬委員会との紐づけ強化
●
経営アジェンダが網羅的/高頻度で経営層議論され、透明性の高い意思決定を行うための運用フロー堅持 |
“人事”の改革 |
育成(研修制度の高度化等) 評価制度(360度評価導入等) 配置制度(ジョブローテ等) 給与体系(KPI/成果連動等) 外部人材登用(数十人規模) |
●
職位者手当/特別手当、全従業員対象とした給与体系の改善(ベースアップ)、などの年度内実現
●
全社要員計画を策定し、「人員不足(リソース、ケイパビリティ双方)」の課題を特定 |
“意識・文化”の改革 |
社長対話・社長月報 社員コンディション見える化 |
●
「全社員⇔社長」の直接対話の場を実施
●
VMVの浸透を目的に、社内でのValue実践者ピックアップ/マンガ化、等のインターナル施策強化。また、毎月のValue実践者を対象に社長からの表彰スタート
●
結果、最新の社員コンディションは中計前から大幅良化 |
ⅱ.構造改革の完遂
a.物販事業
聖域化していた国内物販について、利益重視/収益改善を最優先に複数の施策を推進しております。資材高騰等による原価率上昇のリスクは残りますが、それを上回る高水準な実店舗売上が継続してまいります。また、今期はEC事業加速に向け、リソースを強化してまいります。中計最終年度の64期末までに17億円※1の利益改善を掲げており、63期末時点で約40億円の改善額になっています。
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テーマ | 中計で掲げた施策/目標 | 進捗(63期) |
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SKU マネジメント |
MD起点の企画・販売機能強化 (本部主導振分け、店間移動等) |
●
MD機能強化に向けたシステム投資実行。店舗特性・商品特性に応じた施策を推進。売上伸長ゆえ、商品回転率上昇、不動向在庫の削減が進行 |
商品投入頻度・投入量の適正化 (開発サイクル見直し、等) |
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総SKU数管理の徹底 (64期までにSKU数60%減) |
●
61期開発SKU数4,700から削減
⇒
62期 3,350SKU(実績)
⇒
63期 2,656SKU(実績)
⇒
64期 2,990SKU(計画) |
|
開発・調達 マネジネント |
商品仕様の標準化 | |
相見積もり徹底 |
●
Global 対応商品拡大
⇒
62期 1,650 SKU(実績)
⇒
63期 1,500 SKU(実績)
⇒
64期 2,000 SKU(計画) |
|
中国ECとの共同供給 (グローバル共通商品) |
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EC | EC事業強化(デジマ含) (64期EC比率30%以上・売上30億円以上) |
●
63期実績:EC売上27.9億円
●
64期主要施策: |
販売機能 マネジメント |
Markdownの仕組み構築 | |
アウトレット強化 (EC・実OL店舗・GG) |
●
63期実績:
●
64期主要施策: |
|
赤字店舗撤退 | ||
人材 マネジメント |
要員調整 (退職者未補充、配置転換等) |
●
63期実績:人件費率62期比5%減
●
63期主要施策: |
帳票最適化・BPR |
対61期比
Direct to Consumer部門における割合
b.海外事業
大きなポテンシャルのある海外事業については、複数の施策を講じ抜本的な改革を進めております。特に米国物販事業の見直し、外部パートナーとの連携推進、中国におけるAlifish社とのマーケティングプラン検討等は順調に進捗しています。11億円の赤字解消を掲げている米国事業については、63期末の時点で約18億円改善しております。今後もOne Global、永続的な価値創造サイクルの早期実現を目指してまいります。
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テーマ | 中計で掲げた施策/目標 | 進捗(63期) |
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米国 | 米国事業全体 (64期までに11億円赤字解消) |
●
63期実績:ライセンス事業・ECともに順調に伸長。
●
64期計画:63期の物販構造改革の通年発現 |
ライセンス事業外部パートナーとの連携 |
●
63期実績:北米/欧州の拠点長ミッションを明確化、インセンティブとの紐づけ強化。グローバル商品化/デジタルともに伸長
●
64期計画:ライセンス・EC両事業シナジー追求、自営成長推進/外部パートナー個別連携推進、IP価値創造-ライセンス事業両輪ドライブ、欧州事業協業による欧米シナジー最大化 |
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欧州事業とのバックオフィス統合 | ||
現直営店撤退 (2億円利益改善) |
●
63期実績:直営店舗撤退・卸事業の外部委託実行/物販事業構造改革による効果発現済。
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64期計画:EC・SNS連携・定番SKU強化・ライセンシー連携 |
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Wholesale事業外部委託 (3億円利益改善) |
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EC効率化 (3億円利益改善) |
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東南アジア | 東南アジア事業梃入れ (SSEA設立・事業推進強化) |
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63期実績/●64期計画:事業順調立上げ、Avex連携加速 |
共通 | グローバルでのIP育成 (映画、映像、マーケ投資) |
●
63期実績:映画案件の進捗
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64期計画:映画+グローバルプラットフォーマー連携 |
中国 | マスターライセンシー検討 (63期から効果発現) |
●
63期実績:Alifish社と大型MLA契約締結
●
64期計画:Alifish社とコンテンツ映像契約締結 |
EC事業の拡大 (62期にパートナー選定) |
●
63期実績:新提携パートナーとのEC事業運用開始
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64期計画:SNS連携/定番SKU強化/ライセンシー連携 |
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デジタル人材採用・強化 |
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63期実績/●64期計画:事業開拓推進中(年10~件ペース) |
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教育・キッズパーク・企業ブランディング/コラボ・新規ゲーム (62期にパートナー選定) |
●
63期実績/●64期計画:教育・キッズパークは、政府方針・環境 変化により、現時点では事業機会ほぼ消失 |
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サンリオ上海とSBDS統合 |
●
63期実績/●64期計画:ロックダウンにより清算さらに遅延。 |
貢献利益(実質的価値創造額)=営業損益+本社へのロイヤリティ支払い額
ⅲ.再成長の種まき
次期中計での大きな収益の柱づくりを見据え、新規IP仕組み作りや教育領域における新規事業等、IPビジネスへの還流/再活性化に資する取り組みを進めております。また、サステナビリティ経営として相応しいESG経営やSDGsの施策取り組みも全社横断・経営直下の重要プロジェクトとして推進してまいります。
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テーマ | 中計で掲げた施策/目標 | 進捗(63期) |
---|---|---|
再成長の種まき | 新規IP創造・育成の仕組みづくり |
●
「Next Kawaii Project」から“はなまるおばけ”デビュー決定。既に想定を上回るソーシャルメディアでのエンゲージメント獲得
●
ユニセックスIPの「ぺたぺたみにりあん」のSNSフォロアーも順調に増加 |
教育事業での成長機会取り込み (63期目処に事業立上げ、単体での収益化) |
●
英語“で”学ぶ、Sanrio English Master(SEM)発売開始
●
SEMカスタマーサポートのサブスクサービスの発表
●
ピューロランドの英語で体験する新アトラクション建設決定 |
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ESG経営/SDGs |
教育 ジェンダー 生産・消費 パートナーシップ |
●
63期末女性管理職比率:35%(1)、
―
業績好調の今のタイミングで不動向在庫を一時的に廃棄
―
中計全体(今期末)の目標値は達成見込み
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63期を通して100以上の企業/団体とSDGs関連事業を実施 |
等級ベースで計算
対61期比
2長期成長可能な事業の確立
当社グループは、「One World, Connecting Smiles.」というビジョンを掲げ、1人でも多くの人を笑顔にし、世界中に幸せの輪を広げていくことによって「みんななかよく」という企業理念の達成を目指しています。世界中の人に寄り添い、すべての人々を笑顔にできるグローバルエンターテイメント企業として、さらに変革を起こしていきます。
当社グループはこれまで、『ハローキティ』をはじめとしたキャラクターをブランドとして育て、他社にライセンスすること、また、ギフト商品の企画・製造・販売を行うことで利益を獲得し事業を拡大してまいりました。その主たる収益要因は商品化権ビジネス、いわゆるプロダクトライセンスでした。キャラクターは『ハローキティ』が中心でした。2015年3月期から前連結会計年度の2021年3月期まで7期連続で営業減益となったのは、欧州、米州での、プロダクトライセンス中心、『ハローキティ』中心のビジネスに偏ったことが大きな要因であったと考えています。一方で、中国を中心としたアジア地域については、収益の源泉として、商品化権ビジネス(プロダクトライセンス)以外に広告化権ビジネス(企業向けプロモーションライセンス、カフェ、カラオケ店舗や航空機などのスペースデザインライセンス)とフランチャイズ化権ビジネス(店舗ライセンス)、興行権ビジネス(遊園地、水族館、劇場、テーマパークなどのエンターテイメントライセンス)が並立しており、キャラクターも『ハローキティ』をはじめとする主要キャラクターや、毎年送り出される新キャラクターが、競合・補完し合っています。また、マーケットを熟知した優秀な現地マネジメントが常に市場の変化に合わせた経営を行っています。このようなことから、当社が今後長期成長を図る上では、グローバルな視点でのマネジメント体制の構築と、サンリオのキャラクターライセンスビジネスを理解し、市場の変化にチャレンジできる組織体制の確立が不可欠と考えています。中国を中心としたアジア地域のさらなる事業拡大と、『ハローキティ』の再活性化とともに、現地マネジメントを強化し、欧米市場の再成長、そして中東、東欧、インド、アセアン諸国、アフリカ、中南米などの新規市場の開拓を実行していくことが、当社の長期成長を確実にするものと確信しております。
3ダイバーシティ・マネジメントの活用
当社グループは130の国と地域にキャラクタービジネスを展開しており、今後もますます地域を広げていこうとしております。また、キャラクタービジネスはお子様からお年寄りまで年齢に関係なくマーケットが広がっております。このような状況では、ダイバーシティの考えに根差した商品開発と企業との密接な協業が必須となる一方で、各地域、文化、思想で分断された戦略ではグローバルな人材と商品の流れ、流行への迅速な対応が困難です。そこで、グローバルに一体化した情報管理システムとダイバーシティ・マネジメントによるグローバルなマーケティング体制と連結グループ経営の確立が必須と認識しております。
4キャラクターポートフォリオの構築
キャラクターの開発、育成は、当社の根幹の課題であると認識しております。長期成長には『ハローキティ』を中心とし、二番手キャラクターとしての『マイメロディ』『リトルツインスターズ』『シナモロール』『ポムポムプリン』『クロミ』などの強化、そして、それに続く誰からも愛されるような新キャラクターの不断の開発が重要である一方で、SNSやネット配信などを含むメディア、ゲームなどを通じて『アグレッシブ烈子』『ぐでたま』のようなキャラクター開発や、従来とは異なる市場に向けたキャラクターの開発、そして『ミスターメン リトルミス』などによるキャラクターミックスの適正な構築が必須であると確信しております。
5世界的な感染症拡大等の危機への対応策の構築
当社グループにおいては、社内外の感染被害抑止と従業員の健康と安全を確保するため、リモートワークの実施、店舗営業の自粛等の緊急の対策を講じてまいりました。今後、世界的な感染症の拡大、気候の変動、紛争の勃発等の予想を超えた事象の発生に備え、在宅勤務時の事業効率化を図るハードウェアやソフトウェアの拡充、それに伴うペーパーレス化の推進、また、商品の製造委託先の所在国の分散などサプライチェーンの見直しによる商品供給リスクの低減を行い、長期にわたり安定した事業運営を継続していくための環境の構築が重要であると認識しております。